COVID-19 とモビリティーに関する調査:日本からの回答の集計

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はじめに

 本稿は、ウィーン工科大学による「新型コロナウイルス感染拡大とモビリティーに関するアンケート調査」のうち、居住地を日本と回答した回答セットの分析結果である。5月4日昼(中央ヨーロッパ夏時間)時点までの回答を基に分析している。回答の分析は順次進めており、本稿公開時点までに分析の完了している内容についてまとめているが、速報として本稿を先行して公開する。追加の分析が終了し次第、本稿をアップデートする見込みである。

 全世界からの回答者11,029名 (5月4日時点) のうち、居住地を「日本」と回答したのは1,038名(9.4%)であった。言語別では、日本語版での回答は1,008件、その他の言語版での回答は33件である。回答数は、オーストリア(3,225名)、ハンガリー(1,944名)に次いで3番目に多い。なお、回答時期は、3月31日までの回答が613件、4月1日以降の回答が452件である。

回答者の属性

 性別では、女性が376名、男性が652名、その他が2名、無回答が8名であった。男女・年齢別の回答は下図・下表のとおりとなる。全体の回答者のうち2/3弱が男性である。また、年齢層別では、20歳台~50歳台の回答が多く、回答者の約85%は19~59歳と回答している。日本の人口の約20%は70歳以上であるが、この層の回答者は少ない。これはオンラインアンケートである影響が大きいことと、ソーシャルメディアを通じてアンケートが広くシェアされたため、ソーシャルメディアからのアンケートにアクセスした回答者が多いためと思われる。また、女性の回答者のほうが、男性の回答者よりも年齢層が全体的に若い傾向があるほか、回答者の男女別の性別比率の男性への偏りは、年齢層が上がるほど顕著になる傾向がある。これも同様にオンラインアンケートの影響であるのか、何らか別の理由であるのかは、分析時点では不明である。

  回答者数 割合 [%]
女性 男性 その他 無回答 Total 女性 男性 その他 無回答 合計
年代 18歳以下 3 3 0 0 6 0% 0.0% 0% 1% 6
19-29歳 49 66 0 2 117 10% 0% 25% 11% 117
30-39歳 134 161 1 3 299 25% 50% 38% 29% 299
40-49歳 104 186 1 3 294 29% 50% 38% 28% 294
50-59歳 63 126 0 0 189 19% 0% 0% 18% 189
60-69歳 19 78 0 0 97 12.0% 0% 0% 9% 97
70歳以上 4 30 0 0 34 4.6% 0.0% 0% 3% 34
無回答 0 2 0 0 2 0.3% 0.0% 0% 0% 2
合計 376 652 2 8 1038 100% 100% 100% 100% 1038

職業別では、会社員・公務員が684名(65.9%)、自営業・フリーランスが125名(12.0%)と、合計すると全回答者の3/4を超えて圧倒的に多い。この結果と、回答者の年齢層が総人口の平均よりも若い点は、よく符合する。

 また、入力された郵便番号(最初の5桁のみを使用)から、居住する都道府県および市町村を特定可能な回答は942件であった。都道府県別での回答数上位の10都道府県を示したものが下表である。東京都と神奈川県からの回答が非常に多く、この2都県で全体の半数以上を占めている。これに埼玉県と千葉県を加えると、全体の回答の約6割を占める。この首都圏4都県の人口の、全国の総人口に対する割合は28.7%(2019年1月1日時点、総務省の住民基本台帳に基づく人口から計算)であるので、本アンケート調査の結果は、日本全体の状況というよりは、首都圏の状況を特に強く反映していると理解すべきであろう。なお、大阪府、京都府、兵庫県の回答数の合計は68件であり首都圏のそれと比べると少なく、回答全体の6%程度にとどまる。

都道府県 回答数 割合[%]
東京都 389 37.5
神奈川県 156 15.0
愛知県 49 4.7
埼玉県 42 4.0
千葉県 39 3.8
大阪府 27 2.6
北海道 26 2.5
兵庫県 25 2.4
宮城県 16 1.5
京都府 16 1.5

 本アンケートでは、最終卒業学校も質問しており、967名から有効回答があった。有効回答のうち852名(82.1%)が短大・大学・大学院を、35名(3.4%)が職業訓練校・専門学校を卒業していると回答しており、この2つのグループを合わせた、統計上の分類でいう高等教育を受けた者の回答割合が非常に高い。

 最終卒業学校別人口の統計データで入手可能な最新のものは、2010年の「国勢調査」(10年ごとの大規模調査)である。この調査によれば、15歳以上人口のうち高等教育(高等専門学校・専門学校・短大・大学・大学院)を修了した者は32.2%である。2010年の国勢調査では、高等教育を最終卒業学校とする人口の割合が最も高いのは、調査時点の25~29歳および30~34歳のコホートでそれぞれ56.7%、 56.1%である。このコホートは、2020年現在でそれぞれ35~39歳および40~44歳にあたり、本アンケートの回答者の比率が多い年齢層と重なるが、本アンケートの調査結果はこの年齢層だけと比べても、高学歴者への偏りが著しいことがわかる。なお、同様の傾向は各言語版で共通にみられるが、大学が実施したアンケートである点、オンラインでのみ配布した点、大学のウェブサイトやソーシャルメディアを主に通じて配布されたため、の3点が大きく影響していると考えられる。

通勤行動の変化

 すべての回答者のうち、838名(81%)が通勤状況の変化についてを、53名(5.1%)が通学状況の変化についてを、職業や在学状況に応じて回答している。回答数の多い通勤者の状況の変化についてみると、838名の回答者のうち変化なしと回答したのは348名(41%)、通勤時間帯が変化したと回答した回答者が57名(7%)である。回数が減った回答者は151(18%)、自発的に在宅勤務をしている回答者が115名(14%)、在宅勤務が必須となった回答者が76名(9%)である。

 回答者のうち、820名(79%)が新型コロナウイルス感染症が拡大する前の通勤・通学交通手段と、勤務や通勤・通学状況の変化の両方について回答している。感染症拡大前の主たる通勤・通学の交通手段は、公共交通機関(n=554)であった回答者が、自動車(n=121)であった回答者よりも非常に多い。これは、公共交通機関の交通機関分担率が高い首都圏の回答者の比率が高いことを反映していると考えられる。徒歩(n=51)、自転車(n=46)も比較的多い。

 新型コロナウイルス感染拡大の後、在宅勤務を行っている回答者は179名であり、およそ22%である。この179名のうち、160名(89%)は従前の通勤交通手段が公共交通、または自転車と公共交通機関の組み合わせであり、在宅勤務の実施が、公共交通機関を通勤交通手段にしていた回答者を中心としている様子がうかがえる。

 その一方で、公共交通を通勤手段としていた554名のうち321名(58%)が、自動車を通勤手段としていた回答者121名のうち、104名(86%)がそれぞれ従前と同じ手段で通勤していると回答している。自動車を通勤手段としていた回答者のほうが在宅勤務への移行の度合いが少ない点は興味深い。

 在宅勤務への移行も含めた通勤行動の変化についてを、下図にサンキー・ダイアグラムとして示す。

 また、通勤先の形態についてを本アンケートでは問うており、その形態別にみた通勤状況の変化は下図の通りである。在宅勤務への移行が、事務所・オフィスからを中心に進んでいることが確認できるほか、この形態の職場では通勤回数減も他の形態の職場と比べると顕著である。また、回答者数が少ないが、顧客巡回型の職場の回答者にも在宅勤務へ移行した者や通勤回数が減少した者が多い。通勤回数の減少は、職場形態が教室・劇場・宗教施設等といった、授業や講演・公演形態の回答者にも多いが、これはオンラインでの遠隔授業や無観客ライブの配信等が行われていることと符合する。

 買い物行動の変化

 普段の買い物を通勤・通学の途上で行うことが多いと答えた回答者は42%,、買い物のためにわざわざ外出することが多いと答えた回答者は54%である。この点に関する顕著な差異は見られない。

 可図は新型コロナウイルス感染拡大前と拡大状況下での買い物のための交通行動を比較したものだが、通勤の状況の変化とは異なり、これには目立った大きな変化は見られない。徒歩や自転車のシェアが非常に高いのは、首都圏からの回答が非常に多いためであると思われる。

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